中国画は中国文化を象徽するシンボルのひとつであり、「水墨丹青」という別名を持っています。
「画道の中で、水墨画こそが最上であり、自然の性質に由来し、造化の妙を成す」とは王維が水墨画を最高に称賛した言葉です。
材料の観点から見ると、水墨画は中国特製の煙墨水性および物質顔料を主な材料とし、宣紙を支持体に、毛筆を描画道具とする画法です。芸術家は墨と水を異なる比率で調和させることで、「墨分五彩」と称される多彩な視覚効果を生み出します。ここで言う「五彩」とは具体的な色を指すわけではなく、無限の可能性を象徵する表現です。
中国水墨画の起源は戰国時代まで遡ることができ、魏晋南北朝期における絵画理論の発展がその進展を加速させました。唐代において中国水墨画は最盛期を迎え、その後も宋代から現代に至るまで、伝統を継承しつつも絶えず革新を追求してきました。しかし、どれほど変化を遂げても、その核心は「天人合一(自然と人間の調和)」という哲学思想と独特な東洋美学を体現し続けています。
今回の展覧会は「水墨相見」をテーマに掲げ、水墨画を基盤としながらも水墨画に限定しない広がりを示しています。これは一つには中国画自体が持つ開放性と包容性に由来し、もう一つには物事が一定の段階に達したときに自然と最適化と選別が行われる結果でもあります。今回の出展作家の一人である方土氏は、中国水墨画界の大家であり、長年にわたり水墨画の研究と探求を続けてきました。その画風は奔放で型にとらわれず、しばしば小さな画面に壮大な世界観を描き出し、「咫尺(しせき)の乾坤(広大な宇宙)」とも称されます。
また、王曉鳴氏、銭亜博氏と馬艷氏は海外での学業や生活経験を持ち、中国水墨画に対する独自の理解を深めており、作品には異質な個性が表現されていますさらに、学院派出身の若手作家である庄麗氏と呉迪氏は、中国水墨画の発展に新たな可能性を示しています。各作家の作品の背後には、もう一人のより大きな「自己」が存在しておりその経験、知識、体験が作品に凝縮されているのです。彼らは必ずしも完璧ではないかもしれません。しかし、千人千面というように、個としての多様な表現がそれそれ異なる魅カを持ち、芸術という大きな庭園に自らの花を咲かせることこそ、芸術家の存在意義であるといえるでしょう。是非ご来場ください。
【関連講座】4月2日14:00~馬艶氏による「水墨画の技法ー潑墨古今」(申込不要)
講座内容は、晩唐時代の王默による潑墨画の概念から、近代を代表するの張大千先生が潑墨と潑彩画法を用いた技法を軸に、そして現代の馬驍による潑墨画芸術の歴史的進化を辿ります。
潑墨画の代表作を解説し、作品の視覚的特徴や使用された技法、当時の社会的背景などを多角的に分析・鑑賞します。
一緒に潑墨画芸術の世界を感じ取ることができれば幸いです。
方土作品
劉春潮作品
銭亜博作品
馬艶作品
呉迪作品
庄麗作品